死んでゆく星
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14.03.07 // 外活動:通販について

外 活 動


 


ろぐ1
もこけねまんが





マジいい加減しろよ、ていう






スターダストレヴァリエ






スターダストレヴァリエ裏







それは決して咲く筈の無いものであると心の何処かでわたしは知っていたのだと思う
けれどもどういうわけか、あの迷い無き小さな背中にそれを告げられずに居る、今も

事の真相を、わたしは知らない
失敗したという事実は、結果としてきっと僥倖だった

それでも酷く惹かれたのだ
もしも咲かせることが出来たなら?


あれの開花に目覚める其れは
あなたを何処へと連れてゆく?


午睡の淵から呼戻されたばかりの頭では、碌な結果が思い浮かばなかった。




うすべにに穹を映して散らす翅
嗚、その名状し難きうつくしさよ
しかして若人過つ勿れ
たかが徒花されど妖桜
畏るならば花風と成れ

 ぞわり、と。まだ薄い斑の花筵を踏んだ途端、冷たい手に首筋を撫上げられた。麗らかな陽気の元へ突如として湧き出でた人為らざるものの気配に、睫毛の先までがびりびりと硬直する。瞬間的に尖らせた闘気が地中へ逃げ切れずに爆ぜたのだろう、何処かで小さな悲鳴が上がったところで妖夢は我に返った。無意識の内に柄に触れていた指先を、薄紅の花屑がゆるりと咎める。―――無粋だったか。詰めていた息をひとつ吐いてから、まだぞわぞわと感触の残るその頚に触れるつもりの掌を寸でのところで引き止める。何に、怯えるというのか。"人為らざる"?舌を吐くとはこういうことだろうか。幽々子様なら哂ったろう。冷笑ついでにもうひとつ息を吐いて、そのままぱちりと音を立てて肩を払う。
 花の宴は今日も不思議な穏やかさで賑いを見せ、――しかし其の中から生きている者を探し出すのは難しいだろう。五月雨月の冥界は、在在所所と花の雲。幻想郷中の春を集めたのだ。そう在って然るべき。だが蒼穹に巣を張る西行妖だけは未だその火を点してはいない。これ程の春度でも足りぬというのだろうか。
 (――贅沢な。さすがは、)
 大御所とでも云うべきか。衰えぬ樹勢、まさに見事としか言表わし様が無いその巨木は、ひとつ視界に納めることも叶わない。この身のなんと小さいことか。落花に混じる鋭い春光を避け切れずに眼を眇める。
 「それは凄い桜だったが、もう二度と咲くことは無いだろう。」
 今は此処には無い師を想う。残した言葉はそれだけで、それ以上の意を其処から汲み取ることは、少なくとも今の妖夢には難しかった。ぶるりとかぶりを振って再度老木を仰ぐ。
 "されど"、鈴を振るような声だった。"されど妖桜"と。

 その、瞬きの合間に 黒い枝が伸びる。

 ざわりと枝葉が揺らぐ。風は止んでいた。その聞覚えのある玲瓏な声は、誰のものか。冷えてきた、と言葉にして初めて違和感を思う。日差しは既に初夏のそれへと変わっている。不帰客である桜人のさざめきは止まずまま。微かに退る足元からゆるゆると立ち上るような冷気は、つまり人であり"生きている"方の妖夢だけが感じ取っているのだろう。―――寒い。けたたましく鳴り響く警鐘はどちらのわたしが聴いている?もう二度と咲くことは――?いま此処で貴方の言葉に悩まされるのか。握りこんだ指先が冷たい。ぼやりと幽かに歪むその厳格な背中は、矢張り何も語らない。もやもやした疚しい予感に似た気持ちばかりが降り積もる。ああ、首の後ろが寒いさむいさむいさむい。
 じくじくと内側から蝕まれていく感覚に耐え切れなくなったわたしを、掌中の短剣が哂っていた。


 色を帯びたその賑わいは終りを見せない。それも今は背なの遥か向こうだ。わたしが其処へ混じるには、この程度ではまだ働きが足りないということだ。
 追い縋るように肩を叩くその気配をもう一度ぱちりとはたき落とした。

 それでも刹那、目蓋の裏に視た昏い花雨だけはどうしても消せなかった。




吹き荒ぶ死蝶が風巻は誰が聲ぞ




雪暗れに充つるは瑞花か帰花 誰そ彼れ戦ぐ凛冽の 早月


――そして五月、春は未だ来ない






彗星と災いの枝